特定技能「外食業分野」とは?
2024.11.07新着情報一覧
今回は特定技能の分野の一つである飲食料品製造業ついてまとめていきます。
外食産業は新型コロナウイルス感染症の影響を大きく受け、一時は人手不足が解消されました。
最近では隙間バイトを活用した人材獲得も進んでおり、帝国データバンクにおける各業種の人材不足の割合も減ってきています。
しかし現在は客足も回復し、コロナ禍で需要が伸びたテイクアウト・デリバリーが定着したこともあって再び人手不足に直面している外食事業者も多いのではないでしょうか。
そのため飲食料品製造業分野は、一定の技能を持った外国人材の受入れができる特定産業分野の一つとなっています。
そこで今回は、飲食料品製造業分野において特定技能のビザを取得することで、どのような業務に従事できるのか、必要な条件等についてまとめていきます。
1.業務内容
外食店での 飲食物調理、接客、店舗管理、その他付随業務等に従事します。
飲食物調理では客に提供する飲食料品の調理、調製、製造を行い、食材仕込み、加熱調理、非加熱調理、調味、盛付け、飲食料品の調製等を行います。
接客では客に飲食料品を提供するために必要な飲食物調理以外の業務を行い、席への案内、メニュー提案、注文伺い、配膳、下膳、カトラリーセッティング、代金受取り、商品セッティング、商品の受渡し、食器・容器等の回収、予約受付、客席のセッティング、苦情等への対応、給食事業所における提供先との連絡・調整 等を行います。
店舗管理では、店舗の運営に必要となる上記2業務以外のものを行い、店舗内の衛生管理全般、従業員のシフト管理、求人・雇用に関する事務、従業員の指導・研修に関する事務、予約客情報・顧客情報の管理、レジ・券売機管理、会計事務管理、社内本部・取引事業者・行政等との連絡調整、各種機器・設備のメンテナンス、食材・消耗品・備品の補充、発注、検品又は数量管理、メニューの企画・開発、メニューブック・POP 広告等の作成、宣伝・広告の企画、店舗内外・全体の環境整備、店内オペレーションの改善、作業マニュアルの作成・改訂等を行います。
その他付随業務に関しては、「当該業務に従事する日本人が通常従事することとなる関連業務に付随的に従事することは差し支えない」とされており、付随業務に当たり得るものとして、以下の内容が想定されています。
・店舗において原材料として使用する農林水産物の生産
・客に提供する調理品等以外の物品の販売
2.業務可能な場所
次に掲げる4つの飲食サービス業を行っているお店・事業所において、特定技能外国人を受入れることができます。
・飲食店:レストラン、居酒屋、食堂、料理店、喫茶店、ファーストフード店等
・持ち帰り飲食サービス業(店内で調理した飲食料品を渡すサービス):テイクアウト専門店等
※お店の中に飲食することを目的とスペースがなく、お客さんの注文に応じて調理した飲食料品を提供する
・配達飲食サービス業(店内で調理した飲食料品を配達するサービス):仕出し料理・弁当屋、宅配専門店、配食サービス業等
・給食事業(お客さんの希望する場所で調理した飲食料品を提供するサービス):ケータリングサービス店、給食事業所等
飲食サービス業を営む部門の売上げがその事業所でどの程度占めているのか、という点は問われません。
したがって、例えば宿泊施設内の飲食部門や医療・福祉施設内の給食部門等で受入れることも可能です。
このようなお店・事業所であれば、前述の業務内容を特定技能外国人に任せることができます。
しかし、「風俗営業」や「性風俗関連特殊営業」を営む営業所で働かせることはできません。
特定技能外国人を受入れる側が、上述のような事業所であり要件を満たす旨を「外食業分野における特定技能外国人の受入れに関する誓約書」(以下、誓約書)で誓約する必要があります。
この誓約書は、雇用する外国人のビザを申請する際に、提出する必要があります。
もし事業所の要件を満たしていないにもかかわらず、同誓約書を提出し、「特定技能」ビザを取得した場合には、在留資格等不正取得罪となるので注意しましょう。
また同時に、飲食サービス業を行うにあたって法令に基づく許可等が必要となっている場合には、それらの許可等を受けていることが確認できる資料(営業許可証の写しなど)の提出も必要です。
3.協議会について
外食業分野において、農林水産省により協議会が設置されており、特定技能外国人を受入れるにあたって、受入れ機関は協議会の構成員になる必要があります。
協議会へは特定技能人材の在留申請を行う前に加入する必要があるため、受け入れたい時期に合わせて、協議会の加入を進める必要があります。
なお、外食業分野において特定技能人材の支援を登録支援機関に委託する場合、登録支援機関も協議会に加入している必要があります。
よって、支援委託をお願いする登録支援機関が協議会に加入しているか確認を行う必要があります。
4.特定技能1号ビザ取得の条件
特定技能1号の資格を取得するためには、主に次の2つの要件を満たす必要があります。
・技能試験の合格
外食業の特定技能評価試験は、外食業における必要な技能と知識を評価するために、筆記試験と実技試験の形式で行われます。この試験は、日本国内の試験会場に加えて、外国の指定会場でも実施されるため、海外からの受験も可能です。
学科試験では、外食業務に必要な知識と日本語能力を評価します。主な出題範囲は以下の3分野です。
・衛生管理
食中毒の基礎知識、食材の取り扱い方法、調理器具の洗浄・消毒方法、従業員の健康管理など、食品衛生に関する基本的な知識を問います。
・飲食物調理
食材の下処理方法、各種調理技法、調理機器や器具の使用方法、労働安全衛生に関する知識など、調理業務全般に関する知識を評価します。
・接客全般
接客マナー、配膳方法、顧客対応、クレーム処理、緊急時の対応など、接客業務に必要な知識を問います。
学科試験は、各分野10問ずつ、合計30問のマークシート方式で行われます。
実技試験では、業務遂行に必要な技能を評価します。主な内容は以下のとおりです。
・判断試験
図やイラストを用いた状況設定において、適切な行動を選択する問題です。
・計画立案
所定の計算式を用いて、必要な作業計画を立案する問題です。
実技試験は、各分野5問ずつ、合計15問のマークシート方式で行われます。
・日本語能力試験の合格
店舗での勤務において日本語でのコミュニケーション能力も求められており、日本語能力試験(JLPT)N4以上、日本語基礎テスト (JFT-Basic)相当以上の日本語スキルを証明する必要があります。
5.在留資格の期間と条件
特定技能1号の在留資格は、最長5年間の就労が可能です。
この期間中に、働く企業や職場環境を変更することも可能ですが、その際には新たな職場が特定技能の認定を受けている必要があります。
なお、食品衛生法の営業許可を受けた飲食店において、複数のアルバイト従業員や特定技能外国人等を指導・監督しながら接客を含む作業に従事し、店舗管理を補助する者(副店長、サブマネージャー等)としての実務経験(ただし、当該経験を終えてから、別途農林水産大臣が定める期間を経過していない者に限る)を満たすことで特定技能2号への移行が可能になり、さらなる長期滞在や家族帯同も認められます。
6.給与と労働条件
賃金や福利厚生は通常の日本人の現場従事者と同等、もしくはそれに準ずる額が支払われます。
基本的には、労働基準法に基づき、労働時間や休憩時間、残業代などが適用されるため、日本人労働者と同等の待遇が保障されています。
また雇用契約は、基本的にフルタイムでの直接雇用になります。
外食業分野での特定技能制度の導入は、労働力不足の解消や即戦力の確保、柔軟な雇用体制の構築など多くのメリットをもたらします。
現在外食業で勤務する外国籍の割合は約5%となっており、在留資格別にみると半数以上が資格外活動で働いている留学生や家族滞在ビザの所有者、次に永住者や定住者等の身分ビザ所有者、技能ビザを持ち専門分野で勤務している者、となっています。
しかし、留学生や家族滞在の方は資格外活動でも週28時間以内での勤務に限られており、技能ビザは取得までに特定の業務に10年以上従事する必要があり、取得後も特定の業務のみでの勤務に限定されてしまい、ともに使い勝手が良いとは言えません。
しかし特定技能では、上記のように幅広い業務に従事することができ、かつ8時間のフルタイム勤務が可能なので、店舗スタッフとしての使い勝手が良い人材になります。
一方で、言語や文化の違い、定着率の不安、教育や指導へのコスト増加などの課題に対処する必要があります。
日本人の新規学卒就職者の3年以内の離職率は、外食業が含まれる「宿泊業、飲食サービス業」がトップとなっています。
離職の原因として挙げられるのは、労働環境の厳しさ。肉体労働や残業が多いなどの過重労働や、労働時間が不規則であること等が理由で離職する方が多く、またこのような環境であることから外食企業で働こうと思う方も少ない状況になっています。
これは外国人労働者にも同じことが言えます。
外国人労働者が安心して働けるよう職場内でのサポート体制を強化し、外国人従業員が働きやすい環境づくりを進めることで、制度を成功させることが、今後の人材の獲得・定着のために求められる要件です。
今後の人材獲得のために、ぜひ参考にしてみてください。