技能実習生の「やむを得ない事情による転籍」とは?
2025.01.16新着情報一覧
皆様ご存じの通り、技能実習は3年間は転職ができないルールになっています。
このルールを逆手に取り、技能実習生を奴隷のように扱う企業が出てきてしまい、問題となっていました。
しかし、11月1日、技能実習制度運用要領が一部改正され、やむを得ない事情がある場合の転籍の運用についてルール改訂が行われました。
今回はどのようなルール改訂がされ、企業にどのような影響があるのかをまとめていきます。
現行のやむを得ない事情は以下になります。
・実習実施者の経営上、事業上の都合
・実習認定の取り消し
・実習実施者における労使間の諸問題
・実習実施者における暴行等の人権侵害行為や対人関係の諸問題 等
しかし、現行の運用においては、以下の課題もありました。
①該当性に関する課題:実習実施者における労使間の諸問題や対人関係の諸問題にどのような場合が当たるか不明確
②手続に関する課題:技能実習生と実習実施者の意見が食い違う場合には、転籍の手続に時間を要する
③生活支援に関する課題:転籍先を確保するまでの期間が長期化する場合の技能実習生に対する生活支援が不十分 など
そこで今回、以下の内容で改訂を行いました。
①該当性に関する課題への解決策⇒やむを得ない事情を明確化する
・ 暴行や各種ハラスメント(暴言、脅迫・強要、セクハラ、マタハラ、パワハラなど)を受けている場合
※ 直接被害を受けた技能実習生だけでなく、同僚の技能実習生についても対象
・ 重大悪質な法令違反行為があった場合
・ 重大悪質な契約違反行為があった場合
※ 雇用契約等の条件又は待遇と実態に、社会通念上、技能実習を継続し難いと認められる相違があり、技能実習生が実習実施者に是正
を申し入れたが、是正されない場合
⇒ 上記については、外国人技能実習機構において技能実習計画の認定審査に際し、適切に判断
②手続に関する課題の解決策⇒手続を明確化・柔軟化する
・ 技能実習生から実習実施者等へ転籍の申入れを行うための母国語で記した様式を整備
・ 事実関係の調査については、事案に即して、技能実習生から提出された録音や写真等の資料により、やむを得ない事情があると認められる場合には、転籍可
③生活支援に関する課題への解決策⇒在留管理制度上の措置を行う
・ 転籍に向けた手続の期間中で技能実習を行えない場合には、必要に応じ、週28時間以内に限り、一般的な就労を認める
・ 転籍先の確保ができなかった場合で、「特定技能」への移行を希望する場合などには、「特定技能」へ移行するための特定活動を付与
今回の改訂のポイントは、
①やむを得ない事情が認められた場合、3年以内でも転職ができてしまう
②次の実習先が見つからなくても帰国せずに日本で働くことができる
この2つになります。
よって、これまで技能実習生の扱いが悪かった企業から技能実習生がいなくなり、人手不足に陥ることになります。
そのため、各企業は自社内で技能実習生の扱いがぞんざいになっていないか、今一度しっかり確認する必要があります。
また、この改訂が転職をしたい技能実習生に悪用される恐れもあります。
その点についても、十分注意をしていく必要があります。
「技能実習生は転職できないからどのように扱ってもいい」という考えはもう捨てなければいけません。
技能実習生はあくまで仕事を学び、母国に貢献する人材になります。日本の人手不足を補うための要員ではありません。
人手不足を解消したいなら特定技能を雇用すべきです。
彼らがどのような人材かを今一度考え、最適な人材を雇用する必要があります。