脱退一時金制度とは?
2024.11.14新着情報一覧
こんにちは!
本日は脱退一時金制度について解説していきます。
特定技能を雇用している多くの企業において、特定技能人材から「脱退一時金が欲しいから国に一時帰国したい」との申し出を受けるケースがあります。
事実、弊社と契約している企業様の中にも「脱退一時金が欲しいから帰りたいといっている人材がいる」との問い合わせが増えてきています。
この脱退一時金ですが、、本来は完全帰国をしないともらえないものであり、一時帰国ではルール上もらえません。
しかし、現在法の目をくぐり、一時帰国で脱退一時金を受け取る人が増えてきているのが現状です。
今回は、そもそも脱退一時金とは何か、正しい受け取り方や現在横行している受け取り方等について解説していきます。
1.脱退一時金制度の概要
脱退一時金制度とは、技能実習生や特定技能人材が帰国する際、積み立てられた厚生年金や社会保険料の一部を受け取ることができる制度です。
この制度は、短期間で日本を離れる外国人が、日本で納めた年金保険料の一部を受け取れるようにすることを目的としています。
支給額は、支払った保険料の合計金額と加入期間に基づき計算されます。
支給額は固定ではなく、加入期間が長いほど受け取れる一時金も増えます。
これまで支給額計算に用いる月数の上限は36カ月となっていましたが、特定技能1号の創設により期限付きの在留期間の最長期間が5年となったことや、近年、短期滞在の外国人の状況に変化が生じていること等を踏まえ、2021年(令和3年)4月より(同年4月以降に保険料納付済期間(国民年金)または被保険者期間(厚生年金)がある場合)、月数の上限は現行の36月(3年)から60月(5年)に引き上げられました。
2.脱退一時金の受け取り方
脱退一時金を受け取るためには、いくつかの手順を踏む必要があります。
完全帰国後2年以内に申請することができ、日本年金機構への請求手続きを進めます。
①受け取り対象の確認
- 日本の国民年金または厚生年金に加入し、6か月以上保険料を支払っていたが、短期間(原則5年未満)で 帰国する外国人
- 年金を受給できる資格(通常10年の加入期間)を満たしていない方
その他支給に関する要件は、日本年金機構のHPを参照ください。
脱退一時金の制度|日本年金機構
②必要書類の準備、書類への記入
- 脱退一時金請求書:日本年金機構のホームページからダウンロード可能
- パスポートの写し:氏名、生年月日、国籍、帰国日が確認できるページを含む
- 年金手帳またはマイナンバーカードの写し
- 銀行口座情報:帰国先での受け取りが可能な銀行口座の情報(口座名義人、口座番号、SWIFTコードなど)
③日本年金機構の指定住所へ資料を送付
④一時金の受け取り
日本年金機構で申請内容が確認され、問題がなければ脱退一時金が指定の銀行口座に振り込まれます。
振り込みまでには通常、数カ月程度かかります。
上記の手続きを踏まえてどのくらいの金額がもらえるかは、日本年金機構のHPを参照ください。
3.現状での問題点
上述した通り、脱退一時金を受け取れる人は完全帰国した人のみ、つまり、日本の住所や銀行口座を抹消し、在留カードに穴をあけた状態で帰国した人のみが受け取れるものになります。
しかし現在、一時的に退職し特定技能ビザを保有したまま帰国し一時金の申請・受け取りを確認後に再入国し、元の職場に再雇用される方が増えています。
この動きは上限の60カ月を目安に発生します。
前提として、技能実習のルールで技能実習2号修了時に必ず一時帰国することになるので、多くの人はそのタイミングで1回申請を行います。
よって、技能実習2号から3号に進むか、特定技能1号に進むかによって上限数が変わってくるため、技能実習3号に移行した人は特定技能1号の3年目に、特定技能1号に移行した人は特定技能1号5年目に一時帰国を希望することが多くなります。
しかし、これでは完全帰国していることにはならないため、ルールに反しており、本来であれば認められません。
ではなぜできてしまうのでしょうか?
要因は、管轄省庁の違いです。
入管の管轄は法務省、脱退一時金の管轄は厚生労働省となっており、管轄が違います。
脱退一時金の申請時に本人の在留カードが無効化しているかの確認や、それを厚生労働省から法務省へ直接確認をすることは基本ありません。
よって、本人のビザが有効か無効かばれることがないため、脱退一時金受け取りの要件を満たしていれば、一時帰国でも受け取りができてしまうのです。
しかし、特定技能ビザは就労ビザにあたり、受け入れ企業との雇用関係がないと発行されないビザになります。
さらに、本人は一時金受け取りのために退職しているため本来のルールでは就労ビザを持っていないことになります。
よって、受け入れ企業との雇用関係がないにもかかわらず再入国時に就労ビザを持っていることは不法入国にあたります。
本来ばれないケースがほとんどですが、職務質問時に踏み入った質問(どこで働いているか、パスポートを確認したい等)をされると、ばれてしまうケースがもあります。
また、再雇用を約束した上でも、生産状況によって再雇用の必要がなくなってしまった場合も結果的に不法入国になってしまいます。
よって、かなりリスクのある方法となってしまうため、お勧めはできない手段となります。
4.まとめ
脱退一時金制度は技能実習生や特定技能人材が帰国する際、積み立てられた厚生年金や社会保険料の一部を受け取ることができる制度です。
本来完全帰国した外国籍の方が受け取れるものですが、脱退一時金制度の管轄と在留カードの管轄が違うことを利用し、脱退一時金の受け取りを目的に完全帰国を装い帰国を希望する特定技能人材が増えています。
この方法によって一時金を受け取ったことにより罰則を受けた人材や強制送還された人材は現状いませんが、各企業で制度の内容を今一度見直し、各企業の判断の元運用していくことが重要です。